歯ブラシコーナーに行くと、たくさんの歯ブラシがあってどれがいいのか、分かりにくいですよね。歯医者さんによっては、受付で販売してるところもあってそこで買う人も多いかも知れません。

今回は、どういう歯ブラシが優れているのか、どういうポイントで歯ブラシを選べば良いのか、を論文(エビデンス)を用いながら、解説していきたいと思います。

歯ブラシの各部名称について

ブラシの部分をヘッド、持つところをハンドル、その二つをつなぐ部分がネックです。

ネックの長さ

Effect of different kinds of toothbrushes on toothbrushing pressure and plaque removal in the scrubbing method of toothbrushing (5). Toothbrushes with nylon bristles arranged in different lengths along the toothbrush shank and with different types of toothbrush bristle tip.(Nihon Shishubyo Gakkai Kaishi. 1989 Dec;31(4):1197-206.)

この論文によると、ネックの長さ(30mm〜40mm)が変わっても、歯に押し当てる強さやプラーク除去率には違いはないと報告しています。

よって、ネックの長さは自分の好みで良いと思います。

ヘッドについて

毛の配置について

Comparison of manual toothbrushes with different bristle designs in terms of cleaning efficacyand potential role on gingival recession.

Eur J Dent. 2014 Jul;8(3):395-401.)

この論文によると、上の図のような、毛が平らに配置されている歯ブラシと毛に角度がついている歯ブラシでプラーク除去率を比べたところ、ほとんど違いはなく、柔らかい毛を使えば、歯茎が傷ついて下がることもない、と報告しています。

毛の硬さ

Cleaning efficacy and soft tissue trauma after use of manual toothbrushes with different bristlestiffness.(J Periodontol. 2011 Feb;82(2):267-71.)

毛の硬さについては、硬い毛はプラーク除去効率が上がりますが、歯肉を傷つける可能性があると報告しています。

口腔衛生環境が悪い人は、硬いブラシ、すでに歯茎が傷ついている人は、柔らかいブラシ、分類できない場合は、普通のブラシを推奨すると良い、と報告しています。

毛先の形

Combined effect of end-rounded versus tapered bristles and a dentifrice on plaque removal and gingival abrasion.(Braz Oral Res. 2016;30. pii: S1806-83242016000100227.)

ラウンド毛のブラシでは、極細毛のブラシより効果的にプラーク除去ができたと報告しています。

Clinical effect of a manual toothbrush with tapered filaments on dental plaque and gingivitis reduction. Am J Dent. (2017 Oct;30(5):272-278.)

しかし研究によっては、先細のブラシの方が、歯周ポケットの中まで毛先が届き、プラークが減り、歯肉炎の減少につながると報告しているものもあります。

Are bristle stiffness and bristle end-shape related to adverse effects on soft tissues during toothbrushing? A systematic review.(Int Dent J. 2019 Jun;69(3):171-182)

以上のシステマティックレビューからまとめると、どちらの毛先であっても、プラーク除去率、歯茎の傷つき方、は変わらない、とされています。

毛のデザイン

Tooth brushing for oral prophylaxis.

この論文が毛のデザインをまとめています。沢山ありますね。

十分に訓練された人でも歯ブラシだけでは40%以上のプラークが残るため、歯磨き粉やデンタルフロスなどの口腔清掃補助具の活用が大事である、と述べています。

矯正中の人にオススメの歯ブラシ

Effectiveness of Different Bristle Designs of Toothbrushes and Periodontal Status among FixedOrthodontic Patients: A Double-blind Crossover Design.(J Contemp Dent Pract. 2018 Feb 1;19(2):150-155.)

矯正中の人は、毛先が角度付きの歯ブラシの方がプラーク除去効率が良かった、と報告されています。

炭入りのブラシ

Comparison of Plaque Removal and Wear between Charcoal Infused Bristle and Nylon Bristle Toothbrushes: A Randomized Clinical Crossover Study.(J Contemp Dent Pract. 2019 Mar 1;20(3):377-384.)

炭入りのブラシは、ナイロン毛の歯ブラシのと比べて、消耗が少なく、プラーク除去率が高い、と報告されています。

Comparison of Bacterial Contamination and Antibacterial Efficacy in Bristles of Charcoal Toothbrushes versus Noncharcoal Toothbrushes: A Microbiological Study.(Contemp Clin Dent. 2018 Jul-Sep;9(3):463-467.)

また、1週間使用後の炭入り歯ブラシは非炭毛歯ブラシと比べて細菌数が少なかった、と報告しています。また。炭入り歯ブラシは抗菌特性があることを、報告しています。

まとめ

まず最初に言っておきたいのは、大事なのは、どの歯ブラシを使うか、ではなく、磨き方、時間、フロスの併用です。

それを踏まえた上で、歯ブラシを選ぶことに意味があると思います。

結局どんな歯ブラシが良いの?

従来までは、平らな歯ブラシがいいと言われてきましたが、近年では少し変化してきているようです。

総説 – 歯磨きについて(Niigata Dent. J. 44(1):1-11)

この総説でも言われているように、プラーク除去効率に影響を与えるのは、歯ブラシの形態と歯磨き時間である、としています。時間については言わずもがなですが、毛の形態について大きくまとめると、

毛や毛束の形態

flat-trim: 通常のタイプ

multilevel:毛束の高さが何種類かが混在しているもの

angled:横から見た時に毛束が倒れたものが混ざったもの

となります。

multilevelやangledのタイプの歯ブラシの方が、プラーク除去率が高い、と報告されています。

さて、全てをまとめてみましょう。

ネックの長さ

なんでも良い。

ヘッドの大きさ

小さい方が良い。小回りが利く為。

毛の配置

flatより、multilevelやangledの方がややプラーク除去率高いかも。

矯正中の人:angledが良い。

毛の硬さ

ある程度手入れしてる人:柔らかい方が良い。

口腔衛生環境が悪い人:初めは硬いものでも良い。慣れたら柔らかいものに。

毛先の形

ラウンド毛、極細毛どちらでも良い。

炭入りの歯ブラシ

抗菌性の面で良い。まだ研究が少ない。

オススメの商品

ルシェロ B-20 S

筆者が使っている歯ブラシです。

ヘッドが小さく、ヘッドの先端の毛が、少し飛び出ているため、ワンタフトブラシの様に、一番奥の歯の奥側まで届きます。毛の形態は、multilevelです。Sが柔らかいで、Mが普通なので注意。見た目もおしゃれ。

最後に

何度も言いますが、大事なのはきちんとした磨き方とフロス・歯間ブラシの併用です。まずはきちんと磨ける様になってから、歯ブラシにこだわりましょう!

歯ブラシを選ぶ時のポイントは、上の赤字になっている所です。

ヘッドが小さく、毛が柔らかいもの。

その中から自分にとって使いやすいものを見つけていきましょう。