皆さんは、歯磨きをする前に、歯ブラシを水で濡らしてから歯磨き粉をつけますか?

なんとなく、気分的に洗ってから使いたいとか、濡らした方が歯磨き粉のなじみが良さそうとか、いろいろな考えがあると思います。もしかしたら間違っている、と聞いたこともあるかもしれません。

実は昔から、乾いた歯ブラシを使った磨き方、Dry Brushingという磨き方があります。

今回は乾いた歯ブラシでの磨き方、Dry Brushingについて、根拠になった論文(エビデンス)とともに解説していきたいと思います。

なぜ歯ブラシを濡らす風習があるのか?

筆者も昔は濡らしてから使っていましたが、なぜ濡らしているか、考えたことがありませんでした。そして、色々調べていくうちに一つの仮説ができました。

赤ちゃんの歯磨きの仕方について

赤ちゃんの歯磨きは最初、濡らしたガーゼで行います。そして歯が生えてきたら、歯ブラシを使います。おそらくその時に、お母さんが毛先で怪我しないようにと、ガーゼと同じ要領で濡らすのではないか、と考えました。(あくまで仮説です。)

実際、赤ちゃん用の柔らかい毛先の歯ブラシであれば、濡らさなくても傷付けることほとんどないと思います。安心してください。

さてそれでは、本題に行きましょう。

Dry Brushingの概念

そもそもDry brushing(乾いた歯ブラシで磨く事)の概念とは何か、解説していきます。

1998年に発表された論文で紹介されています。磨き方の流れとしては以下のようになります。

  1. 渇いた歯ブラシで磨く。(水も歯磨き粉もなし)綺麗になるまで磨く。
  2. 歯ブラシを水で洗う。
  3. 歯磨き粉を再び付けて磨く。

綺麗になるまで、など一部あやふやな部分がありますが、この磨き方を歯科衛生士さんが患者さんに指導したところ、以下のような結果が得られました。

結果

約6ヶ月後、歯茎からの出血が55%減少。

歯石も65%減少。

歯磨きの時間が長くなった。

一部の患者さんは効果に感激して、歯医者さんにもっと来るようになった!

といい事づくめだったようです。ここで知ってもらいたいのは、

ポイント

Dry Brushingは乾いた歯ブラシだけで磨くことではない!

と言う事です。濡らすタイミングが大事ってことですね!

歯磨き粉なしで磨いた場合

それでは、実際、歯磨き粉なしで、濡らした歯ブラシと乾いた歯ブラシどっちの方が歯垢(プラーク)除去率が高いのか、過去の論文を元に解説していきたいと思います。

Dry brushing: Does it improve plaque removal? A secondary analysis. (Int J Dent Hyg. 2018 Nov;16(4):519-526)

この論文は、歯磨き粉なしで、濡らした歯ブラシと乾いた歯ブラシのプラーク除去効果を比較する実験です。

結果は、

結果

乾いた歯ブラシ:57%

濡らした歯ブラシ:58%

歯磨き粉なしでの歯磨きは不快に感じた

どちらでも変わらない、と言う結果でした。

しかし、歯磨き粉がないと、やはりスッキリした感じがしないのか、不快に感じた人が多かったようです。

また以下の論文でも同じように、違いはない、と言う結果になっています。

Comparing the effect of dry and wet brushing on dental plaque removal in children.(J Indian Soc Pedod Prev Dent. 2019 Jul-Sep;37(3):292-296. )

この論文では、乾いた歯ブラシを用いると、泡の量が減り、効果的なブラッシングの長さになる可能性がある、と示されています。

また、乾いたブラシの方が、歯ブラシの毛(フィラメント)が濡れた時と比べて固いので、歯の表面が綺麗になるとも、報告しています。

ポイント

歯ブラシは濡れていても、乾いていても汚れの取れ方は同じ!

結論:歯磨きをする前に濡らす?そのまま?

結論としてはどちらでも良い、と言うことになります。

理想は、最初に述べたように、乾いた歯ブラシで汚れを取ってから、歯磨き粉を付けて磨く、Dry Brushingだと思います。2回磨くのが億劫でなければ(笑)

一回だけ磨くのであれば、

個人的な考えでは、歯磨きの前に、歯ブラシを濡らすと、歯磨き粉が泡立って吐き出しに行く回数が増えたり、実際歯磨きの時間が少なくなる傾向があるので、乾いたまま歯磨き粉を付けた方が良いと思います。

幼稚園や小学校でおすすめの磨き方

Dry brushingは、小学校や幼稚園で歯磨きを教える際に有効です。

最初は、歯磨き粉を使わない為、唾を吐き出す必要がなく、教室で一斉に行えます。そして終わった子から歯磨き粉のペーストを配ってあげて、仕上げ磨きして、口をゆすぎにいく、といった具合です。

最後に

Dry Brushingはかなり古くにできた手法ですが、乾いたブラシで汚れを取ったところにフッ素入りの歯磨き粉を浸透させることができます。

歯磨き粉自体には、汚れを取る効果はない為、理にかなっています。

もちろん、なんらかの理由で歯ブラシが汚れていたら、洗ってから使ってください!乾くのを待つ必要もありません!

ぜひ一度やってみて、違いを体験してみてください。