ラバーダムって何?

ラバーダムとは、正式には「ラバーダム防湿」と呼ばれます。ラバーダム防湿とは、根管治療(歯の神経を取る治療)や、虫歯治療の際に、ゴムのシートを治療する歯の部位だけを露出させて張り、治療する方法です。

ラバーダム防湿をする理由

根管治療において、ラバーダムの有効性を示す研究はあまり多くなく、エビデンスレベルも高くありません。しかし、ラバーダムの有効性を否定する論文はなく、予後に影響を及ぼす可能性は十分に考えられます。

虫歯治療においても、歯と詰め物の接着性の向上、長期耐久性についていくつかの論文で示されています。

アメリカでは論文ベースで治療が行われます。論文上患者に対して不利益が生じる行為を行なった場合は、訴訟される可能性があります。

諸外国のラバーダム使用率は、イギリス30.3%、スウェーデン67%、アメリカ58%となっています。この数字をみると、有用性についてはなかなか微妙なところ、という感じでしょうか。

しかし、日本では、根管治療時にラバーダムを必ず使用すると回答した一般歯科医師は5.4%、、日本歯内療法学会(根管治療を専門とする歯科医師の学会)会員でも25.4%という報告があり、使用率が高いとは言えません。

では、なぜラバーダムをすべての治療で行わないのでしょうか?

歯科医師がラバーダムを敬遠する理由

海外の論文を参考に、大きく分けると、以下の4つの理由に分けられます。

①患者さんの不快感

②材料費、低い治療費

③装着の為の時間

④技術不足

①患者さんの不快感、に関しては、2006年にある大学病院で根管治療を受けた患者と施術した歯科医師のラバーダムに対する意識調査を行なっており、ラバーダム使用に関する不快事項について、歯科医師の考えと患者の実感については下図のようになっています。患者さんはラバーダムに安心感を感じ(73%)、ラバーダムの装着を希望している(98%)、と報告されています。

よって、歯科医師側の行き過ぎた想像、ということになりますね。

②③④に関しては、現状保険点数はどうすることもできませんが、技術が身に着けば、時間も短縮され、患者さんの信頼も得られるので、歯科医師側の問題であると言えます。また保険点数に収載されていないだけで、保険でもラバーダムを使用することはできます。

ラバーダムの利点

唾液による感染を防ぐ

虫歯は感染症です。唾液には虫歯の菌も含まれている為、再感染を防ぐ為に重要です。

消毒に使う薬や水が口の中に漏れ出さない

消毒薬が口の中に漏れると、変な味がして、咳き込むことがあります。

また水が喉に入ってこない為、水が苦手な方でも安心して治療を受けられます。

舌や頬が邪魔をしてこない

歯科医師側も安心して治療を行えます。

器具が口の中に落下するのを防ぐ

歯科の治療器具はとても小さいので、誤って口の中に落とすと飲み込んでしまう可能性があります。

ラバーダムの欠点

治療中、口が開いたままの状態である

口をずっと開けていると顎の筋肉が疲労し、辛くなってきます。口を開けたままの状態を補助する道具もあるので、辛い時は遠慮せずに先生に聞いてみましょう。

唾がたまり飲み込むのが大変

口を開けたまま唾を飲み込もうとしてみてください。多分ほとんどの人ができないと思います。中を吸引する道具もあるので苦しい時は左手をあげて先生に伝えましょう。

ゴムが苦手な方は不快感が伴う

ラテックスアレルギー専用のラバーダムはありますが、匂いが苦手だとラバーダムできない可能性もあります。

あなたはラバーダムを希望しますか?

ラバーダムを使用するデメリットはほとんどないと思います。ラバーダムをしてもらって予後の良い治療を受けてください。

根拠となる論文(参考文献)

I.A.Ahmad Rubber dam usage for endodontic treatment: a review. Int Endod J. 2009 Nov;42(11):963-72.

吉川ら 根管処置におけるラバーダム使用の現状 日歯内療誌, 24(3) : 83-86, 2003

佐々木ら 歯内療法時のラバーダムは不快か? 日歯内療誌, 27(1) : 2-5, 2006