この記事で使った論文(エビデンス)について少し詳しく解説していきたいと思います。
2010年に、NHKのためしてガッテン、などでもこの内容が、放送されていたようです。
事の発端になった論文(象牙質の酸蝕症に関する論文)
Brushing Abrasion of Softened and Remineralised Dentin: An in situ Study. Caries Res. 2004 Jan-Feb;38(1):62-6.
象牙質の試験片を被験者の口腔内に21日間着用してもらい、その後、炭酸飲料に、90秒間、2回浸けた後、歯磨きを開始する時間の違いによる摩耗をみた実験になっています。
その結果、浸漬後、30分、60分、空けた方が、10分、20分と比べてが摩耗が少なかった、という結果になっています。
その為、象牙質の歯磨きにおいては30分、間を空ければ問題ないということになります。
エナメル質の酸蝕症に関する論文
Toothbrush abrasion of erosively altered enamel after intraoral exposure to saliva: an in situstudy. Caries Res. 1999 Nov-Dec;33(6):455-61.
こちらの論文では、エナメル質をクエン酸に3分間浸して、直後、30分、60分で歯磨きによる摩耗を計測しています。
結果は、60分後の摩耗が、直後、30分後に比べて有意に低い値を示した、と述べています。
よって、エナメル質の歯磨きにおいては、酸性の食物摂取後は1時間空ける必要がある、と言えます。
また以下の論文では、食事の食前1時間、直後1時間は歯ブラシを避けた方が良い、と言われてるようです。(Wikipediaより)
Risk assessment and preventive measures. Monogr Oral Sci. 2006;20:190-199.
筆者は、論文の内容を見る事が出来なかったので、なぜ食前1時間なのか?詳しいことはわかりません。もし知ってる人いたら教えて下さい。
歯磨きと癌の関係性に関する論文
Frequency of Daily Tooth Brushing and Development of any Type of Malignancy. Anticancer Res. 2019 Aug;39(8):4415-4421
この研究では、後ろ向きコホート研究で、毎日の歯磨きを1−2回している人は、悪性腫瘍の発症率が低かった、というものです。
エビデンスレベルが少し低いですが、歯磨きをしっかりしている人は、生活習慣が良く、発症率が低いのかもしれませんね。
コーラのpHは??
東京医科歯科大学の北迫勇一先生の調査によると、コーラのpHは2.2であったようです。
メガボンドのエッチングプライマーのpHが2なのでだいぶ酸性ですね。
ちなみに北迫先生は大学院生時代に同じ分野の助教授でいらっしゃいました。
酸蝕症の研究のスペシャリストです。
酸蝕症の罹患率に関する論文
Dental erosion: Clinical appearance and management. Nihon Rinsho. 2016 Aug;74(8):1372-1376.
この論文によると、日本の成人を対象とした疫学研究で、26.1%が酸蝕症である、とのことです。
Prevalence of tooth wear on buccal and lingual surfaces and possible risk factors in youngEuropean adults. J Dent. 2013 Nov;41(11):1007-13.
また、欧州7カ国を対象とした、疫学調査では、18歳〜35歳の男女の罹患率は、29%であると報告されています。
4人に1人は酸蝕症である、という計算になります。
きっと皆さんの医院にも知らないうちに来ているはずです。
論文内でも言及されていますが、酸蝕症の診断や基準が曖昧な為、初期のエナメル質段階が見落とされているようです。
上に示した論文内では、酸蝕症の臨床写真や治療方針も載っているので参考にすると良いと思います。
結論
少し話が逸れましたが、食後の歯磨きは、
一般の人は、食後すぐ歯磨きする。
酸蝕症の可能性、酸性の食物摂取後は1時間後に磨くのが、ベター。
ということになります。
最後に
食後の歯磨きのことを調べていると、いつの間にか酸蝕症や歯磨きのリラックス効果など、関係なくはないですが、少しずれたところにいってしましました。
歯磨きのリラックス効果については、またいつか記事を書こうかと思います。