歯に物が挟まる、そんな時はフロスを使いますよね。

でも歯医者さんに行くと歯間ブラシを勧められる事ありませんか?

どっちも使った方がいいのか、どちらかだけで良いのか、分かりにくいと思います。

そんな謎を根拠となる論文と共に解説していきたいと思います。

歯ブラシのみのプラーク除去率は58%!?

まず、歯ブラシのみとフロス、歯間ブラシ併用時のプラーク除去率はどれくらい差があるのでしょうか?

これに関してはかなり古いですが、

The effects of interdental brush and dental floss in the reduction of interdental plaque (Nihon Shishubyo Gakkai Kaishi. 1975 Sep;17(2):258-64.)

こちらの論文が根拠(エビデンス)として示されます。

この論文は、歯ブラシのみまたは口腔清掃補助具使用時の隣接面(歯と歯の間)のプラーク除去率を比較検討したもので、歯磨き前のプラークを100%とした時、歯ブラシのみだと58%、歯間ブラシ併用で98%、フロス併用で86%の清掃効果があった、と述べています。

フロスと歯間ブラシの間で統計的な有意差は無いようです。

歯間ブラシもフロスも同じ位効果があると言う事です。

また、日本歯科保存学雑誌においても2005年に同じような発表がされており、歯ブラシのみ:61.2%、フロス併用:79.0%、歯間ブラシ併用:84.6%となっています。

また、海外の最近の論文でも同じようなことが言われています。気になる方は以下から。

Interdental plaque reduction after use of different devices in young subjects with intact papilla: A randomized clinical trial. (Int J Dent Hyg. 2018 Aug;16(3):389-396)

さて、次はフロスと歯間ブラシについて述べていきましょう。

フロスと歯間ブラシどっちが良いの?

これについては以下の論文を根拠にお話ししていきたいと思います。

Interdental brushing for the prevention and control of periodontal diseases and dental caries in adults. (Cochrane Database Syst Rev. 2013 Dec 18;(12):CD009857)

この論文は、コクラン(cochrane)というグループから出ている論文です。システマティックレビューといって、いろんな論文を様々な角度から検証し、本当に正しい情報かを吟味し、偏りのない情報を提供している論文です。

少し話が脱線しますが、論文というのは全てが正しいものではありません。条件に偏りがあったり、著者の意向が入っていることがあります。それをコクランは第三者的な目線から評価しているので、かなり信頼できると言えます。

この論文の結果では、

歯肉炎の改善に関しては、歯間ブラシがフロスよりも効果的である。

プラーク除去率に関しては、歯間ブラシもフロスも差は見られない。

と述べています。

わかりやすく説明すると、腫れている歯茎はお掃除する面積が広いために、歯間ブラシの方が効果的ですが、健康な歯茎の汚れの取れ方は変わらない、といったところでしょうか。

歯間ブラシとフロス、どちらも似ているように見えますが、何が違うのでしょうか?

歯間ブラシとフロスの違い

フロスの使い方

フロスは細い糸でできているため、歯と歯の隙間があまりない、歯茎が健康な人にとって良い清掃道具です。

隣接面(歯と歯の間)には、二つの面があります。上の画像の赤線と青線です。そのため本来であればフロスを隣接面に通す時は、どちらか一方の面に押し付けて、二回通すことをおすすめします。

僕のおすすめのやり方は、

① 人差し指と中指にフロスを巻きつける

② ノコギリのように動かしながら、歯の隣接面に挿入する。痛くない程度まで深く入れる。(図でいう赤線の面)

③ 歯の片面に押し付けて、ノコギリのように前後させながら上に引き抜く

④ ②③を反対の面で繰り返す。(図でいう青線の面)

フロスを指に巻いてノコギリのように前後させながら入れたり出したりすると、きつい面も入りやすいです。

ポイントは人差し指と中指まとめて巻くこと!

一本の指だと食い込んで痛くなります。

下の動画では、可愛い衛生士の女の子がフロスの使い方を説明してくれてます。

歯間ブラシの使い方

歯間ブラシは、芯の周りに毛のようなものが付いています。

上の画像の黒い部分に隙間が少し開いている人に適しています。他にはブリッジや歯科矯正中でブラケットがついてる人は歯間ブラシが適しています。

きついのに無理に入れようとすると逆に歯茎が下がってしまうので、気をつけてください。

具体的には、歯医者さんで、歯茎に何も炎症がないと言われ、歯間ブラシを通したら血が出てきた場合などです。歯茎に炎症がある場合は、少し触れるだけで血が出ますが、健康な歯茎は多少触っても出血しません。よって炎症がないのに出血した場合は、歯茎を傷つけている可能性が高いです。

歯間ブラシも歯の表側からと裏側から入れるのが効果的です。一度入れたブラシはティッシュで拭き取ったり、洗って綺麗にしてから挿入してください。

結局、歯間ブラシとフロスどっちを使えばいいの?

簡単にまとめると、

歯茎が健康な人、治療された箇所が少ない人:

フロス

中程度以上の歯周病と言われた人、口の中にブリッジがある人、矯正でブラケットをつけている人、インプラントをしている人:

該当の部位に対しては、歯間ブラシ

基本的には歯医者さんに行った時に、自分に適した道具を聞いた方がいいです。人によって歯の形、歯並びなど異なるので!

ちなみに今は、スーパーフロス、という名前の太めのフロスがあり、歯間ブラシと同じように使えます。使い捨てで少し値段はしますが、良い商品です。

インプラントはフロス or 歯間ブラシ?

以下の論文は前に出したものと同じようにシステマティックレビューです。

An Overview of Different Interdental Cleaning Aids and Their Effectiveness. (Dent J (Basel). 2019 Jun 1;7(2))

このレビューによると、インプラントは歯間ブラシかウォーターピックをおすすめしています。

インプラント(赤線)と天然の歯(青線)を比べるとインプラントの方が歯冠(歯の頭)に対してくびれています。

そこにフロスを届かせるのは至難の業です。そのため、面積が広い歯間ブラシが良いとされているのだと思います。ウォーターピックについてはまたいつか記事を書こうかと思います。

どれくらいの頻度で行えばいいの?

しっかり時間をとって丁寧にすれば、一日一回で十分です。寝る前に行うのがベストです。

両方した方がいいの?

基本的には歯ブラシ+フロス、または歯ブラシ+歯間ブラシ+フロスになると思います。

なぜなら歯間ブラシが全ての歯に適用になることはほぼないからです。ここまで読んでいる方なら理由は分かるはずです!

最後に

少し長くなっていまいましたが、いかがだったでしょうか?

是非自分の口の中にあったケア方法を見つけてみてくださいね!